長崎家庭裁判所 昭和55年(家)1090号 審判 1980年12月15日
申立人 田中正夫
事件本人 田中ヨシエ
主文
申立人を事件本人の扶養義務者に指定する。
理由
当裁判所が取調べた本件及び昭和五五年(家)第一〇一八号事件の各記録編綴の戸籍謄本、除籍謄本、家庭裁判所調査官の各調査報告書によると、次の事実が認められる。
1 事件本人は申立人の継母である、すなわち、申立人は父田中一夫(明治四四年九月一八日生)、母キイ(大正一〇年五月八日生)の二男として出生したが、昭和三六年五月二三日右母キイが死亡した。父一夫は同年一一月二二日事件本人と婚姻し、以後申立人は事件本人によつて養育され、実の親子と同様に仲好く生活してきた。父一夫と事件本人との間に子はない。
2 事件本人の両親はすでに死亡し、現在兄水谷吉夫、妹川中ヨシミ、同原田キミエ、同吉田アサノがいるが、いずれも世帯を持つており、事件本人を扶養する経済的余裕がない。
3 申立人は瓦販売、施行の会社に勤務し、もと父一夫が所有していた現住の土地、家屋を相続により取得した。事件本人は申立人夫婦らと同居し生活してきたところ、精神分裂病により昭和五五年八月二八日以降精神病院に入院しているが、申立人は今後も事件本人の面倒をみてゆく考えであり、自から本件申立をした。事件本人の兄妹は申立人が事件本人の面倒をみることに異存はない。
以上の事実によれば、申立人は事件本人の三親等内の親族であつて、申立人が事件本人の扶養義務を負うについて特別の事情があるというべきである。
よつて、本件申立を理由ありと認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 上田次郎)